コラム
ふと見上げると、空の色が少しずつ明るくなり、冷たかった風のなかに柔らかな春の気配を感じるようになりました。 今の節気は「雨水(うすい)」。 空から降るものが雪から雨へと変わり、凍っていた大地が解け始める。そんな、冬の緊張が少しずつ和らいでいく季節です。
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太陽の動きをもとに一年を二十四の季節に分けた「二十四節気」という暦は、古くから日本の暮らしに根付いてきました。 季節の移ろいに目を向け、自然の変化に合わせて次の季節へと心と住まいを整えるための静かな道しるべとされ、 農業が中心だった時代から、人々はこの暦を通して自然と対話し、日々の暮らしを営んできました。
慌ただしく過ぎていく日々のなかで、暦にそっと目を向けること。 それは、住まいに心地よいリズムを生み、暮らしに豊かな余白を添えてくれる大切な習慣のように思います。

IKKA DESIGNでは、この雨水の始まりに合わせて、硝子のお雛さまを飾っています。 雪解けの水をそのまま閉じ込めたような透明感と、陽だまりを感じさせる温かな金色。そっと春のあたたかな空気を運んでくれるようです。
お雛さまは、女の子の身代わりとなり、一年の病気やけが、不運を引き受けてくれる存在として大切にされてきました。 私たちも、そんな健やかな幸せへの願いを込めました。
受け継がれてきた文化や習慣を取り入れつつ、今の空間に寄り添ってくれる飾り物をひとつひとつ丁寧に選んでいく。 その過程は、自然と向き合う静かな時間でもあり、節気ひとつひとつへの愛着がより深く、確かなものになっていくのを感じます。
家のなかに、季節を映し出すものをひとつ迎えてみる。 それだけで、いつもの見慣れた景色がどこか新鮮で、あたたかなものに変わることがあります。
厳しい冬を越え、ようやく訪れる柔らかな春。 そんな季節の移ろいを住まいの中で静かに感じる時間は、心を癒す尊いひとときなのかもしれません。
これからも日本の暮らしの中で受け継がれてきた古き良き暦と習慣を、大切に守り伝えていければと思います。

tsutsui
