
コラム
先日、『なぜデンマーク人は初任給でイスを買うのか?』という本を読みました。
タイトルの通り、デンマークでは初任給で“イス”を買う人が多いのだそうです。
読み進めるうちに、北欧の人々がどれほど「暮らす空間」や「インテリア」を大切にしているのかが伝わってきて、たくさんのことを考えさせられました。

IKKA DESIGNでは「北欧家具の似合う家」というコンセプトも掲げています。
だからこそ、あらためて北欧の人たちの暮らしの背景や考え方に触れられたことは、とても貴重な気づきでした。
彼らにとってインテリアは単なる装飾ではなく、「幸せと結びついたもの」なのです。
この本の中で筆者が語っていた印象的な言葉があります。
「インテリアは幸せと結びつく」「空間=暮らしの質=心の豊かさ」という考え方です。
日本ではまだ、「自分の家にそこまでお金をかけるなんて…」と思われることも少なくないかもしれません。
けれど、北欧では自分自身のために、そして自分の家を訪れる人のためにも、住まいの空間にしっかりと手をかけていくことが、人生をよりよくすることにつながるという価値観があります。
その考え方に、私はとても共感しました。
たとえば、椅子ひとつを選ぶにも、作り手の思いや背景にまで想いを馳せて、大切に長く使う。
それは単に“モノを買う”という行為ではなく、暮らしを少しずつ、自分の“お気に入り”で満たしていくということ。

時間をかけて選び、使いながら味わいを増していく。やがてそれが家族の中で受け継がれていく。
そうした感覚に、深い豊かさがあるように思うのです。
この考え方を読みながら、ふと日本の昔ながらの暮らしを思い出しました。
たとえば、縁側に座って庭を眺める時間や、四季を取り込んだ設計、家族が自然と顔を合わせる間取り。
自然と寄り添い、物を大切にし、人との距離感を大事にしてきた日本の暮らしには、北欧の価値観と通じる部分がたくさんあることに気づかされます。
私たちがご提案する家づくりも、まさにその延長にあります。
「ただ暮らすための家」ではなく、「自分らしく過ごせる空間」を少しずつ育てていけるような家。
家族や友人との団らんの時間が、ふっと気持ちを緩めてくれるような居心地のいい場所。
そんな空間があるだけで、日々の何気ない時間が、大切な記憶になっていくのだと思います。
北欧の人々がインテリアに託す想いは、「暮らしそのものを大切にすること」なのかもしれません。
その想いに学びながら、私たちもまた、お客さまの人生にそっと寄り添えるような住まいをお届けしたいと思っています。

イスからはじまる心地よさ。
それはやがて、家というかたちになり、日々の時間や人生までもゆたかにしていきます。
暮らしに丁寧に向き合いながら、心の面まで豊かになれるような空間。
「この場所が好き」と、心から思えるような家。
そんな住まいを、これからも一緒にかたちにしていきたいと思います。
tsutsui