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コラム

額と住まい
2025.12.1

青山美智子さんの『赤と青とエスキース』という小説を読みました。

2人の男女と1枚のエスキース(スケッチや下絵のこと)をめぐる物語の中に、「額職人」の話が出てきます。

額職人が語る、額への思い、そして絵への敬意。

それを読んでから、美術館で絵を見るとき、額までじっくり見るようになりました。

これまでは絵が主役で、額はその「まわり」にすぎないと思っていました。

ですが額それぞれが似ているように見えても少しずつ違っていて、「この絵にはこの額があるからこそより良く見える」「よく似た絵と額だけど、もしも額を入れ替えたら少しイメージが違いそう…」と新たな視点で絵画を楽しみました。明るい絵にはすっきりとした額が、重厚な絵には豪華な額が。

まるで額が絵の魅力を引き立て、完成させているようでした。

額職人は、この絵に対してどのような思いでつくったのだろう…と思いをはせてみたり、もしも自分が額職人ならこの絵に対して、どんな額をつくるだろうと考えてみたりしました。

そんな額職人の姿にふれたとき、私たちの家づくりにも、少し似ているところがあるなと思いました。

お客様の想いに寄り添いながら、一緒に考え、形にしていく設計者。
その図面を、寸分の狂いなく、確かな手仕事で実現してくださる職人さんたち。
そして、それぞれの暮らしにぴったりの“額”のように、住まいを整えていく過程。

家も、主役はもちろんそこで暮らすご家族です。
でもその「まわり」をどんなふうに仕立てるかで、日々の風景や心地よさは大きく変わっていきます。

一枚の絵にぴったりの額があるように。
ご家族にぴったりの住まいがきっとあると、私たちは信じています。

たくさんの人の想いと手が加わって、ひとつの家ができあがること。
そのことを大切にしながら、これからも丁寧に家づくりに向き合っていきたいと思います。

yanagi

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