2023.12.6
家づくり

住宅の断熱性能とは?等級が高い住宅のメリット・デメリット

快適な暮らしのためには、住宅の断熱性能を高めることが重要です。断熱性能が高ければ外が暑くても寒くても、家の中の温度を一定に保つことができます。

また、一年中室温を快適に保つ以外にも、様々なメリットがあります。ただし、同時にデメリットも理解しておくことが大切です。

断熱性を示す断熱性能等級やUA値、断熱性を高める必要性についてもお話ししますので、これから家を建てる予定の方はぜひ参考にしてください。

住宅の断熱性とは?

熱は、高温から低温へと移動します。お皿に熱いスープを入れるとお皿も温かくなりますが、これはスープの熱がお皿に移動したためです。住宅でも同じことが起こります。何もしなければ熱は低いところへ移動してしまうため、家の中をいくら暖めても、外が寒ければ熱が逃げてしまいます。

住宅の断熱性とは、この熱の移動を遮断することです。たとえば、鍋つかみを使えば、熱い鍋や鉄板も触ることができます。これは、鍋つかみが熱を遮断しているためですが、住宅に使う断熱材がこれにあたります。

断熱材を使い熱が外に逃げていくことを防げば、住宅内の暖かさをキープできますので、とても快適に過ごせるでしょう。

住宅の断熱性能には等級が新設された

ではどのような住宅が断熱性が高いといえるのか、目安となる等級やUA値についてお話しします。

断熱性能等級は7まである

断熱等性能等級とは、断熱性を示す等級です。これまでは4が最も高かったのですが、2022年4月に5が、10月には6と7が追加されました。

概要は以下の通りです。

等級 概要
等級7 冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を40%削減可能。
等級6 冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を30%削減可能。
等級5 断熱等性能等級より上位の「ZEH(ゼッチ)基準」断熱基準と同等。断熱材や窓ガラスなどにも等級4よりも大きな熱の損失を防ぐ対策が講じられている。
等級4 等級5が新設される前の最高等級で「次世代省エネ基準」といわれる。壁や天井、開口部(窓や玄関ドア)に熱の大きな損失を防ぐ対策が講じられている。
等級3 1992年基準、通称「新省エネ基準」。一定レベルの断熱対策が講じられている。
等級2 1980年基準、エネルギーの削減効果は小さい。
等級1 上記以外。断熱についての特段の対策はない。

数字が大きいほど断熱性能は高くなりますが、6と7は戸建て住宅に適用されるものです。等級3以下が制定された時期が古いため、十分な断熱性を持っているとは言い難く、これから選ぶなら等級5以上を目安としてください。

なお、2025年4月に法改正が予定されており、断熱等級4が最低基準となります。

断熱性能を表すUA値

UA(ユーエー)値とは断熱性能を表す数値のことで、建物の表面(外皮)を介してどのくらい熱が逃げやすいのかを数値化したものです。数値が高いほど熱が逃げやすいということになりますので、数値が低い方が断熱性の高い家であることがわかります。

UA値は地域によって違い、沖縄や九州など暖かい地方よりも北海道や東北など寒い地方はより低い数値が求められます。

UA値は断熱性能等級の基準ともなっており、たとえば等級5は東京なら0.6、札幌は0.4という数値が定められています。この数値以下でないと、断熱性能等級5とはならないのです。

断熱性の高い住宅の3つのメリット

エアコンをつけているところ

断熱性を高め、熱の移動を防ぐことには3つのメリットがあります。

外気の影響を受けにくい

断熱材がないと、夏の熱の影響をまともに受けて室内の温度が上がりやすくなります。冬はいくら家の中を暖めても、外の冷気の影響で暖まりにくくとても寒いです。

断熱性が高ければ熱の移動を遮断できますので、外気の影響を受けにくく、室内の温度を一定に保つことができます。建物内外の温度差が激しくなる暑い夏、寒い冬でも快適に過ごせます。

光熱費を節約できる

外気の影響を受けにくいと、エアコンで快適にした室内の温度を外に逃さず、過剰に暖めたり、冷やしたりしなくても済みます。エアコンの使用量も抑えることができるので、光熱費の節約にもつながるでしょう。

健康維持にも貢献する

快適な温度を一定に保つことができると、家の中の温度差によるヒートショックを防ぐこともにつながると考えられています。

ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧の変動が起こることにより、心筋梗塞や脳内出血などを引き起こすことです。たとえば暖かいリビングから冷えた脱衣所に移動したり、またそこから温かい浴槽に入ったりしたときに、血圧が大きく変動することで体に負担をかけます。

ヒートショックそのものの影響による死亡数を明らかにするのは難しいものの、東京都健康長寿医療センター研究所のデータ(2011年)によると、17,000人がヒートショック関連の急死であると考えられています。

また、温度を一定に保つことができると、カビの発生も防ぐことができます。カビによる疾患も防ぐことができるので、断熱性の高い家は体にも優しい家だといえるでしょう。

断熱性の高い住宅のデメリット

断熱性が高いことはメリットの方が大きいものの、デメリットについても知っておくことが大切です。

建築費が高くなりがち

断熱性に優れた資材、遮熱性の高い窓などを使うことから、どうしても住宅全体のコストが高くなってしまいます。また、優れた施工技術も必要であるため、建築費全体が高くなりがちです。

ただ、長い目で見れば光熱費を安く抑え、快適に暮らすことができるわけですから、デメリットばかりではないはずです。

内部結露が起こる可能性がある

外気との温度差によって窓や壁に水滴がつくことを結露といいますが、これは表面結露と呼ばれるものです。それに対して、床下や天井裏、壁の内側などにできる結露を内部結露といいます。断熱性の高い家は、内部結露が起きやすいのがデメリットの一つです。

ただし、屋内の暖められた空気が断熱材の中に入ることで起こる現象なので、内側に防湿シートを貼ったり、換気をよくするシステムを導入したりするなどの対策で防ぐことができます。

石油ストーブは使えなくなる

断熱性の高い住宅は同時に気密性も高いため、一酸化炭素中毒の恐れがある石油ストーブは基本的に使用できません。

どうしても使用したい場合には、1時間に1回窓を開けるなどして、頻繁に空気を入れ替える必要があります。

断熱性の高い住宅を建てるなら省エネ性能のチェックは必須

2021年4月から、住宅の省エネ性能について建築士から説明する義務が課されています。「外皮性能基準」と「一次エネルギー消費量基準」についての情報提供をしなくてはならないので、万が一断熱性についての説明がなかったなら聞いてください。

性能の話は難しいかもしれませんが、わかるまでしっかり聞くことが大切です。パンフレットなどにも記載されているはずですが、わからなければ建築士に確認しましょう。

なお、説明が義務化されているのは建築士に設計を依頼して家を建てる場合なので、建売の場合は説明は不要です。しかし工務店等に聞けば教えてくれるはずですので、遠慮せずに聞きましょう。住宅性能表示を見せてもらえればわかるはずです。

これから家を建てるなら断熱性能等級6・7をめざす

断熱性能等級について説明しましたが、法改正によって今後は等級4が最低ラインになります。

欧米では家の断熱性能についての基準が高く、家の断熱化が義務化されています。省エネの基準を守ることは家主の義務となっており、政府が省エネ基準を制定しています。断熱等級5のUA値は東京なら0.6、札幌は0.4ですが、アメリカは0.43、イギリスは0.42が標準です。ヒートショックによって2万人近くが亡くなるなどということは、先進国では考えられません。
(※参考:「とっとり健康省エネ住宅改修資料」「海外における省エネ規制・基準の動向」より)

日本では暖房がもったいないという意識も根強く、自分がいる場所だけを暖め、家全体を暖めようという考えがありませんでした。省エネが強く意識されるようになったのは、エネルギーのあり方を考え直さなければならなくなった東日本大震災以降です。

欧米では、車と同じように家も燃費で選ぶという考えが浸透していますから、日本もこれからは燃費で家を選ぶ時代です。断熱性の高い家にすれば、快適に暮らせるだけでなく冷暖房費にお金がかからなくなるのです。

ですから、今後家を建てるなら、最低でも等級5、できれば6〜7を目指すことをおすすめします。予算とのバランスも大切ですので、建築士の話をよく聞き、デザインや間取りだけでなく、燃費という点もよく考えていきたいところです。

まとめ

断熱性能とは、熱を遮断する性能のことで、住宅の断熱性を高めれば、外気の影響を受けにくくなります。家の中の温度を一定に保つことができるので、夏は涼しく、冬は暖かく快適に過ごすことができます。

温度差が少なくなることから、ヒートショックによる死亡を防ぐこともできると考えられており、冷暖房費を節約するだけでなく健康にも良い家づくりができます。

住宅の省エネ性能については建築士に説明義務がありますので、きちんと話を聞き理解しましょう。不明な点はわかるまで確認しましょう。

今後は断熱性能等級4が最低ラインになりますが、燃費を考えたら最低でも等級5、できれば6〜7を目指すことをおすすめします。

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