2023.7.6
土地探し

擁壁とは?工事の種類や費用を抑えて建築する方法を解説

家を建てる時、高低差のある土地だと擁壁が必要になる場合があります。擁壁がないと斜面が崩れ、家が倒壊したり、周囲にも被害を及ぼしたりする恐れがあるからです。

土地の形状によっては家を建てる前に擁壁の工事が必須になりますので、その予算も見越しておかなくてはなりません。そこで、擁壁にはどのような種類があり、工事費がどのくらいかかるのか、擁壁について詳しく解説します。これから擁壁を建築する予定の人や擁壁のある中古物件を購入予定の人はぜひ参考にしてください。

擁壁とは斜面を安定させるために建てる構造物のこと

高低差がある土地の上に家を建てる場合、そのまま建ててしまうと斜面や盛土が崩れる恐れがあります。それを防ぐために建てるのが擁壁です。

地震の揺れや雨水を含んだことによる水圧などにより、土はいとも簡単に崩れてしまいます。土が崩れないように土留めをし、壁状の建物を作ることによって家が倒れないようにすると共に、土砂崩れによる被害も防ぎます。

擁壁を建てなければいけない要件

建築基準法第19条第4項では、崖崩れ等の恐れがある時は擁壁を設置するなどして安全対策を講じなければならないとされています。具体的にどのような擁壁を建てるのか、その要件は自治体の条例(通称がけ条例)によって定められています。東京都を例に説明しましょう。東京都では、東京都建築安全条例第6条に規定があります。

  • 高さ2メートルを超える崖の上に家を建てる場合
  • なおかつがけの下端からがけの高さの2倍の範囲内に家を建てる場合

この条件に該当すると、高さ2メートルを超える擁壁を建設しなくてはなりません。つまり、擁壁を建てないなら、がけの下端から2メートル以上離れたところに建設する必要があるということです。

ちなみに土留め工事と混同されがちですが、違うものです。つまり、たとえば裏山の土砂が崩れないようにコンクリートで覆うような工事は土留め工事です。擁壁工事は土が崩れないように壁を作る工事です。

擁壁工事の申請には時間がかかる

家を建てるときには建築確認申請が必要ですが、擁壁も同様に申請が必要になります。がけ条例の内容は自治体によって多少の違いがありますので、まずは自分が家を建てようと思っている土地がどのような規制の対象となるのかを確認しなくてはなりません。

おおむね、どの自治体でも高低差が2メートル以上あればがけ条例の対象となっていますので、そのような土地に家を建てようと考えているなら自治体に聞いてみましょう。申請してから建築の許可が下りるまで1ヶ月ほどかかります。

擁壁の建築許可が下りないと家の建築申請もできないため、早めに申請しておきましょう。

さらに、傾斜度が30度以上あるがけは「急傾斜地」とされ、この急傾斜地の高さが5メートル以上ある場合、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていることがあります。この場合は、都道府県知事の許可が必要になりますが、指定区域の工事は都道府県が行うのが一般的です。

擁壁の種類は主に3種類ある

擁壁は主に3種類あります。建築予算や土の状態によって適したものを選びます。

鉄筋コンクリート(RC擁壁)は見栄えも耐震性も良い

コンクリートの中に鉄筋が埋め込まれている擁壁で、強度に優れているので耐震性も十分です。

さらに、地形に合わせて

  • L字型
  • 逆L字型
  • 逆T字型
  • もたれ式
  • 重量式

などの形を使い分けます。3種類の中では最も費用がかかります。

ブロック擁壁は軽量で価格を抑えられる

石材やコンクリートを一定の規格に加工した間知石(けんちいし)を積み上げて作る擁壁をブロック擁壁といいます。間知石とは、山から石を切り出した際に、石材としては利用できない大きさの石で、古くから神社の石垣や城壁に使われてきました。切り出したブロックを6個並べた時のサイズが一間分(180cm)となることから、間知石と呼ばれるようになりました。

現在はコンクリート製の間知石もあり、間知石ブロックと呼ばれています。鉄筋コンクリート擁壁と比べるとやや耐久性は劣りますが、軽くて費用も抑えられるのが特徴です。高さ3メートル〜5メートル程度の壁を作ることができます。

石積み擁壁は練積み擁壁が基本

読んで字の如く、石を積み上げて作られる擁壁を石積み擁壁といいます。石を積み上げただけの空積み擁壁では強度が不安なため、接着剤代わりに石の間にモルタルやコンクリートを流し込んで積み上げた練積み擁壁が採用されています。

擁壁建築にかかる工事費の相場

擁壁工事の費用は、大きさだけでなく、その土地の形、場所などによっても大きく変わってきます。

擁壁工事費の相場に幅がある

1平方メートルあたりの単価は3万円〜5万円という業者もあれば、5万円〜10万円という業者もあります。高い方の金額で考えておくと良いでしょう。

工事をしたい部分の面積に単価をかければ、工事費の目安はわかります。高さ2メートル、長さ8メートルの擁壁を作るなら、16平方メートル×3万円〜10万円=48万円〜160万円ほどの予算が必要です。

擁壁工事の費用がかさむ理由

工事費の単価に幅があるのは、工法によって価格が違うことや、土地の形状や地盤の状態によって補強工事が必要になってくるためです。

地盤が元々緩い場所、豪雨や地震など自然災害の多い地域は、そうでない地域と比べてより丈夫に擁壁を作らなくてはなりません。そのため、基礎工事に費用がかかり、全体の工事費も高くなる傾向にあります。

また、工事をする場所も工事費を左右する重要な要素です。擁壁を作る場所の周囲が開けている土地であれば、大きな重機も入りますので効率的に工事ができます。しかし、工事をする場所が狭かったり、そこに行くまでの道が細かったりして重機が入れないと、小さな重機で工事をしなくてはなりません。工事の日数が長引けばそれだけ人件費もかかりますので、工事費が高くなってしまうのです。

工事費を抑えるためにできる3つのこと

擁壁と作業員
できるだけ丈夫な擁壁を作りたい、しかし工事費は抑えたいと思った場合はどうすれば良いでしょうか。

複数の業者に見積もりを依頼して比較する

先ほども説明した通り、工事の費用は業者によってかなりばらつきがあります。ですから、1社では決めず、複数の業者に見積もりを依頼して、内容を検討してください。工事の内容と費用の違いをよく比較して、予算内に収まる業者を選びましょう。

一般的には鉄筋コンクリートよりも間知石ブロックを使った方が費用は抑えられますので、工法の違いなども比較してみてください。

擁壁工事専門の元請け業者に依頼する

家を建てるときに同時に擁壁を建てることから、ハウスメーカーや工務店に一緒に工事を依頼する人が多いと思いますが、ハウスメーカーが直接擁壁工事をすることはまずありません。

ハウスメーカーも擁壁工事の専門業者に依頼するため、ここに仲介手数料が発生します。それならば、自分で直接、専門業者に依頼した方が工事費のみで済むでしょう。

自治体の補助金を利用する

自治体の中には、擁壁工事に補助金を出しているところがあります。

例えば東京都港区は、工事費の一部を助成しています。助成金の額は工事費の3分の2以内で、警戒区域内であれば5,000万円が上限、それ以外は1,200万円が上限となります。その土地の管理者であれば誰でも申請はできますが、予算に達した場合には受付終了となりますので、早めの申請が必要です。

まずは、自分の自治体に助成金制度があるかどうか確認してみましょう。

まとめ

擁壁とは、2メートル以上ある高さの土地で、その下端から2メートル以内に家を建てる場合に必須となる壁のことです。擁壁を先に建築しなければ、家を建てることはできません。

擁壁には種類があり、最も丈夫で見た目も良いのは鉄筋コンクリート造りの擁壁です。ただし、費用を抑えるなら間知石ブロックを使う方法もありです。複数の業者に見積もりを依頼して工事内容を比較検討してください。

自治体によっては補助金制度もあります。件数が限られていますので、早めに相談してみましょう。

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