コラム
映画「かもめ食堂」のリバイバル上映を観に行きました。
20年前に公開された映画で、日本人がフィンランドで食堂をひらくお話です。
ゆったりと流れる時間の中で、人と出会い、料理や食を通じて仲が深まっていくそんな何気ない日常と、合間のシーンに映される海や森の壮大な自然の風景は心を穏やかにしてくれました。
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そんな日常を彩っていたのは、丁寧に選びとられたであろう家具や照明、食器や調理器具でした。
アルテックのテーブルとチェアは、やわらかな曲線と淡いバーチ材の色味が、水色を基調とした、かもめを思わせる食堂の空間に溶け込んでいました。
イッタラの食器はシンプルながらも美しいフォルムで料理を引き立たせていました。
インテリアが空間にもたらす魅力。シンプルではありながらも1つ1つが洗練され、
かもめ食堂の世界に溶け込み、世界観をつくっていました。
映画の中で食堂にフィンランドの方を呼び込むためシナモンロールを焼くシーンがあります。
焼きあがるとその香りに誘われて、マダムたちが店にやってきました。
おいしそうにシナモンロールとコーヒーを愉しんでいるのを見ていたら、
私もどうしてもシナモンロールが食べたくなり、自分でシナモンロールを焼いてみることにしました。
はじめてのパン作りは分からないことだらけで、材料が足りていなかったり、材料を入れる順番を間違えて分離させてしまったり、そんな小さな失敗に心が折れそうになりました。それでも焼き立てのシナモンロールを想像し、作業を続けました。
分離した生地をまとめるために腕が筋肉痛になるくらい生地をこね、発酵を待ち、かたちをつくっていきました。
生地は、かたちも大きさもバラバラで不格好でしたが、焼く頃には大切に育てたような愛着がわいていました。

焼き上がりが近づいてくるとパンとシナモンのいい香りが家中に漂っていきます。
そして、オーブンを開けると湯気と共に幸せな香りが、わっと広がりました。
コーヒーを淹れ、ちょうどいいお皿を選び、焼き立てのシナモンロールをいただきます。
おいしくできたか正直自信がなく不安になりながら一口ほおばりました。
ふわふわしたパン生地とシナモンと砂糖の甘みが口いっぱいに広がり、幸せな気分になれました。
シナモンロールをつくってみて、パンをつくる人の気持ちがわかった気がします。
生地をこね、発酵を待ち、焼き上がりを待ちます。作業が多く時間はかかりますが、その待っている時間も心地よく、出来上がりを想像しわくわくしました。
そしてパンの香りに包まれながら家族とシナモンロールとコーヒーを愉しみ、のんびりと過ごす午後のひとときは、心を穏やかにさせてくれました。

かもめ食堂がシナモンロールで現地の方たちと打ち解けたように、
“食”は、人と人とをやさしくつないでくれると思います。
人のために料理をつくったり、おいしいと言ってもらえてうれしくなったり、
みんなでテーブルを囲み、おいしいものを愉しむ時間は、何よりも幸せなひとときだと思います。
今日もどこかで、あたたかな一家団欒の時間が生まれることを願っています。
tsutsui
